■一つ目の恋④
その日、私は、田神さんから、引継ぎを受けていた。
もうすぐ約束の3週間後がやってくる…。
私は思い切って、田神さんに話しかけた。
『今日、お話したい事があるので、夕方🌆時間をとってもらえますか?』
夕方、田神さんに声をかけられた。
『今、大丈夫?』
私は、緊張しながら、後ろをついて歩いた。
事務所から少し離れた駐車場で、田神さんは立ち止まった。
『お話したい事があったんだよね?仕事のこと?』
そう問いかけてくれた田神さん。
「仕事は…悩みがたくさんだけど。
田神さんが転勤しないでくれたら解決します。」
私は、そう口火を切った。
『それは無理だなあ…』と困ったように苦笑い。
『他に何かあったんじゃないの?俺で良ければ、聞くよ。』
私は覚悟を決めた。
私は…。
「この会社に入って、田神さんと一緒に仕事をしたこと、今までにない感情を持ってること、
私にも田神さんにも家があり、迷惑をかけたいわけではないこと、転勤で離れてしまうのが、とても寂しいこと…」
思っていることを、全て言葉にした。
ゆっくり、ゆっくり…。
時折、微笑みながら、、困った様な顔をしながら、でも、きちんと最後まで話を聞いてくれた。
それから、田神さんは…
ゆっくり口を開いた。
『ありがとう。気持ちは何となくわかっていたんだ。
俺は、昔から、こんな人間だから、うまくいえないけど、一緒に仕事していて、とても楽しかったよ。
仕事を教えてても、素直に一生懸命やってる姿をみてきたから、誰よりも安心できた。
だけど…。俺は家族が好きなんだ!
昔から、家族に憧れてて、今の家族を大事にしたいんだ。
あなたが好きとか嫌いとかじゃない。
家族を壊したくないんだ。わかってくれる?
気持ちは嬉しかったよ。』
そう言って、頭を、ポンポンしてくれた。
「はい」
そう返事すると、田神さんは、また頭をポンポンしてくれた。
※読んでいただき、ありがとうございました。