■会社の飲み会で
定期的に行われていた会社の飲み会。
私も、気分転換によく参加していた。
田神さんがいなくなって、初の飲み会の時…。
どことなく、寂しくてそれが表情に表れてしまったのかもしれない。
順番に、ビールをついで回っていた斎藤さんが、私のところにもやってきて…
『のんでるかー?』
と声をかけた。
私は、適当に流すつもりで、『飲んでますよー』と返事し、彼が次に移るのを待っていた。
だけど、何故か、斎藤さんは私の隣にドンと座り込み、そのまま飲み始めてしまった。
私は…。
内心、面倒くさいなあ〜と思いつつ、横に座った斎藤さんの相手をすることになってしまった。
今から思えば、彼とゆっくり話したのはその時が始めてだったかも知れない。
斎藤さんは、大好きなお酒を、たくさん飲みながら、
私に、始めて赴任した日の事や、事務所で、朝、全員にコーヒーを入れてくれるという風習に、とても驚いたことを話してくれた。
私の地元は、九州の片田舎だったため、亭主関白、上司にお茶を入れる事は、入社して一番初めに、覚えるというのが当たり前だった。
どの会社にいっても、まず覚えるのは、周りのコーヒーの好み。
この人はミルクだけ、あの人はミルクと砂糖…。
そうやってカップとコーヒーを覚えつつ朝は一人ずつコーヒーをデスクに配り、人の名前を覚えるのが新人の仕事だった。
ごく普通に事務所の中では、毎朝、女性が皆のコーヒーをいれ、カップを洗う。
私達には普通の事だったけど、地域によっては、特別の事だったのかもしれない。
斎藤さんは、今まで、コーヒーなんか入れてもらったことはない!とびっくりしていた。
関東の方では、男性も女性も対等だから、そんなことしてたら怒られちゃうって笑っていた。
九州男児の多い地域ならではの、事だったのかもしれないが、私は別に嫌いではなかった。
そんな話をしつつ、斎藤さんは、私に、ふれてはほしくない事を切り出した。
※読んでいただき、ありがとうございました。